秘密警察-Secret Police- - 35/39

SP31

左目を潰したせいか気絶してしまったコイツを担いで、元居た場所まで戻ろうとしたが‥なんだかあっちに居る桜井たちの方がやけに賑わってるな。何してんだアイツら?

ずっと気になっていたので、方向転換してはそっちへ駆けつけてみせると高見沢と鈴木も俺の後ろに着いてきやがる。

スタッと屋上まで降り立ち、棚瀬桜井吉田の居る真後ろまでやってきた瞬間バッと三人が俺の方を勢い良く振り返ってきたので何事かと思いきや‥‥

「え、ちょ!お前ら三人何やってんの!?その子女の子でしょ!?」

「わぁ‥‥エロい‥」

早速ツッコミを入れてる高見沢だったが、鈴木の奴は本音がポロッと出てしまったようだ。仕方ない、それが男ってもんだからな。

「た、高見沢!誤解するんじゃねーぞ!?別に俺たちは‥」

「こんな季節に服脱がしちゃ可哀想でしょ!冷えたらどーすんの!?」

「あ、そっち‥」

「亀甲縛りはとてもグッド」

ビシッと親指を立てる高見沢。やっぱコイツらアホだ。

ハァと溜め息をついては視線を上へ逸らしてみせると、棚瀬が俺の担いでいるコイツを渡せと言ってくる。どうやらコイツにも亀甲縛りをするらしい。

何やら変なことで楽しんでいる棚瀬を上から見下ろしつつ、意外と早くにコイツらを片付けられてしまったことに心がスカッとしている。やっぱ俺と棚瀬が付いてると何とかなるもんだな。

「できたっ」とまた、にこやかな笑顔で亀甲縛りを終えた棚瀬が満足そうにしながら俺を見上げてきた。

「どーっすか坂さん?三人とも亀甲縛りの刑!」

「もう分かったからソイツら連れてあっちのビルに戻るぞ」

「は~い」

よいしょ、と呟きながら奴ら二人をヒョイと担ぎ上げる棚瀬。二人とも意識ないから暴れることはないが、逆に力が抜けてる分重たく感じてしまうか?とは思ったが、棚瀬のことだ。なんとも思ってなさそうな顔で「さ、行きましょ!」と明るい声で俺に言う。というより俺よりもサッサと先に行っちまった。

なので他の奴らもさっき居たビルまで一斉に戻ってこれば、サブリーダーだった奴が一人コロンと転がっているだけの状態を初めてここで目にする。動く気にもなれねーか、アイツは。

棚瀬が奴の隣に担いでいた二人をほっぽり出しては「これで全員ね」と口にしたあと、俺の方まで戻ってきた。

「いや~良かったですねぇ、ちゃんと終わって!」

「いや、まだだ。まだ終わってねぇ」

「え?」

俺と棚瀬と話し合っている後ろでは、四人が何やらヒソヒソとまた別のことについて話しているのが聞こえてきた。

「ねぇ、アイツのあの左目どうしたのさ?」

「坂崎が俺のタバコで潰してた」

「えっ!?タバコでですか!?こっわ~」

「そうか、太郎たちにはまだ言ってなかったな。坂崎って犯人拷問するの大好きなんだよ。それで日頃のストレス解消してたりする結構悪趣味な奴」

「うわぁー‥。鈴木お前見てたの?」

「流石に見てられなかったよ‥」

「目ぇ逸らしてたもんな、お前。しゃーないと思うけどなアレは。俺も始めの頃は見れんかったし」

「俺もキツかったわー。でも慣れれば案外見れるからヘーキヘーキ。だけど自分がアレをやれとなるとムリだ」

「だよな。正将たちも、別にあそこまでなれとは言わんから‥というより拷問なんてしなくていいから、とにかく坂崎のそういう所は尊敬すんなよ‥」

「えっと‥はい」

「うっす‥」

「さっきからうるせーぞテメェら!」

そう怒鳴った途端、後ろに控えていた四人の体がビクッと飛び跳ねているのが分かった。

全部聞こえてるっつーに。

俺とアイツらのやり取りを見ていた棚瀬だけがニヤニヤしているしで‥あーーウゼェ!

イラッときたので、まだ眠りこけている二人を無理やり起こしては大声で「起きろぉッ!!」と間近で怒鳴ってみせると、左目をなくした方だけはビックリしながら飛び起きたが、こっちの女は相当睡眠薬の効き目が強いのか、ピクリとも動かない。爆睡してやがる。

なのでソイツの頭をガッと足蹴にしてみせると、後ろから鈴木と吉田の「えぇっ‥」という戸惑った声が微かに聞こえてきた。あ?なんだ、文句あんのか?

ギロっと睨みつけると二人は一瞬で固まった。まるで俺がメデューサみたいじゃねーか。

「いい?坂崎はー、女や子供にだって容赦しない奴だから。覚えときな」

「は、はい」

「ついでに棚瀬も同じだから」

「棚瀬さんも‥っすか」

「あの二人はほぼ同じ考え方だってば。ね、棚瀬~」

「はーい!」

高見沢の呼びかけに対してクルッとそっち側を振り向いては元気よく返事する棚瀬。‥そう、俺も棚瀬もこういう奴。

つーかホントに起きねーなコイツ。どんだけ効き目抜群なんだよ。

もう一度さっきより強く頭をガンッと蹴ったくると、「いっ‥!?」と痛みがようやく伝わったのか、こちらも飛び起きてくれた。よし、これで全員起きたな。

ったく、散々面倒なことやってくれたなぁお前らは。

コイツらを蔑む目で見下せば、言いたいことが沢山ある言葉をグッとこらえて「バカ野郎‥」とだけ呟いた。

「坂崎‥‥」

「なんでこんな‥。お前たちは何をしたか分かってんのか!?」

「どこにもこの感情をぶつける場所がなかった‥。俺たちだって被害者だ!!‥心臓に爆弾抱えて生きてるなんて‥‥誰がこうなると予想した‥?」

「お前たちの正義の心はどこにいった!お前たちはそんっなにも弱い奴らだったのか!?‥本当に見損なった。お前らがこんなバカなことをしていなけりゃ俺は三人を受け入れた。また秘密警察として働こうと言ったはずだっ」

「もう何もかもが手遅れだ‥‥」

静まり返るこの場の空気。

‥だったのだが、朦朧としていた意識が正常に戻ったのか知らんが「なにこの格好!?」と恥ずかしそうにしながら自分に縛り付けられている縄を見ては顔を赤くしている奴がいる。

すると棚瀬が「俺でーす!」と元気よく手を挙げては相変わらず楽しそうにしてやがる。そんな棚瀬をキッと睨んでいたが、アイツにそんな目で睨んだところで痛くも痒くもねーよ。

そして左目を俺のせいでなくした奴だって、さっきからずっと俺を見てはブツブツと何か恨みの言葉を言ってやがるしで‥

はぁ‥

俺は懐からとある物を取り出してみせたが、まだそれは隠しておこうか。

「お前らだって元は俺たちの仲間だったんだ。衝突することもあったが、仕事はちゃんとやってきてたじゃねーか」

「うるさい。俺は坂崎が嫌いだ」

「あ?なんだその態度は?」

「坂崎が嫌いだっつってんだよ!」

「俺だってテメェなんか願い下げだバーカ」

「おい、やめろ。坂崎、私たちにだって生きる意味が欲しかったんだ!だから‥」

「だからこんなことを仕出かしたってのか?アホだろ」

「‥アホで結構です。いい加減にこの縄をほどいてくれませんかね?左目が痛いのですが」

「黙っとけ。うるさい、あーーうるせぇぞお前らッ!」

イラついたので、手に隠し持っていた拳銃をパッとコイツらに向けてしまえば、三人はピタッと言葉を発するのをやめてしまった。

しかし我に返ったかのように、ハッとなった三人は俺が持っているこの物騒なもんを見ては「ふざけるな!!」と抵抗してくる。

「坂崎!お願いだ、それだけは勘弁してくれ!!」

「私たちにだって家族や大切な人たちがいるんだ!」

「貴方にだって人情くらいはあるでしょう!?」

「は?」

「これからは大人しくブタ箱にでも居るから!!だからそれだけは‥っ」

「耳障りだから全員死ね」

相手が喋りかけであろうが、うるさいのは嫌いなのでなんの躊躇もなく三発バンバンバンッと連続で撃った。ちゃんと頭を狙って一発で死ねるようにしたんだから感謝しろよ。

さっきまでやかましかった三人が、今は何も言わなくなった。よし、もうこれで終わり。

こんな一瞬の出来事に対して棚瀬はヘラヘラ笑っては「さっすが坂さん!」と褒めてくれるが、新人二人が先輩二人の背中にコソッと隠れてしまっていた。

高見沢と桜井も若干引いてる感じではあるが、おめーらはもうこんなの慣れてるだろーが。今更引くことか?

出ていた煙をフゥッと吹いていると、高見沢が俺に尋ねてくる。

「なぁ坂崎、お前最近96時間って映画観たぁ?」

「96時間?観てねぇ」

「な、なんですか96時間って‥?」

「リーアムニーソン主演の映画。敵が喋ってようが容赦なく撃ち殺す主人公」

「わぁ‥‥」

別にアレを真似した訳じゃねーぞ。

「いやぁ、坂さんお見事!最初から殺すって言ってたのでどーいう殺し方するのかなー?と思ったらコレですか!やっぱ面白いっすね~!」

「褒めるな棚瀬!太郎たちに悪影響だこんなの!秘密警察がこんなやり方だと思われちゃ嫌だ!」

「太郎くん、正将くん、普段はこんなことしてないから安心してねー?今回は、と・く・べ・つ!」

「その言い方キモいわっ!!」

「は、はい‥」

「分かりました‥」

‥まぁ、そんな反応になるわな。

さて、この死体をサッサと片付けてサッサと戻るか。朝日が出始めちまってるから、あんまりゆっくりしてられねぇな。

なんて考えていると、こんな時間だというのにヴーヴーと電話がかかってきやがった。ポケットに入れておいたスマホを取り出しては液晶に映し出された名前を見て、ハァ‥と溜め息が出てくる。

‥親父なんだけどな。

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