罪人たちの舟 終焉4
誰かが俺を呼んでいる気がする…
なんだろうか?でも頭と体が重たくて返事が億劫だ…。どうしよう。でも返事をした方がいい気がする…
ーー起きよ、坂崎…ーー
「……、」
ーー目を覚ますがいい、坂崎ーー
「…?」
「目覚めよ、坂崎」
「……っ!?」
声の持ち主の言葉がハッキリと聞こえてきた瞬間、思わず俺はガバッ!と飛び起きたのだけれど……あれ?な、なんでマモン様が目の前にいるんだ…?
キョトンとしている俺を見兼ねたのか、マモン様が「何故(なにゆえ)私の部屋で寝ておる?」と聞いてくるけれど、俺にも何がなんだかさっぱり理解出来ていないので「えっと…」としか言えずにいる。
「わ、私は一体…」
「こちらが聞いておるのだ」
「す、すみませんマモン様…!」
とは言っても本当に分からんもんなぁ…。どうしたもんか、と思いながら自分の体を見てみるとなぜかそこには布が巻き付けてあって、しかもそこらの床には小さな小瓶がいくつか転がっているし、なぜか水の入ったケースもそこに置いてある。俺の足元辺りには真っ赤な布が放置されてあるし…
て、ていうかここ、マモン様がいつも座っている舞台の上じゃ…!?
そう悟った途端、全身がヒヤッとしてしまったがマモン様を見るにあまりそこに関しては怒っているようには見えないので俺は「すみません!」という言葉をそっと飲み込む。あ、危ねぇ…
「俺は…怪我をしたのか…?」
「そのようだな」
この光景を見るに、誰かが俺を介抱してくれていたのだけは見て取れる。て、ていうか俺なんでこんな大怪我負っているんだ…?
でも今布で巻かれている辺りを確認してみせるも、傷はそこまで広がっていない。というより、修復しているようにしか見えない。
「アスモデウスの毒でも使ったのか?」
「い、いえ私は何もしておりませんが…。きっと誰かが私の手当てでもしてくれたのでしょう」
「…坂崎、貴様はなぜ怪我をした?」
「それは…その、よく思い出せなくて…」
事実を口にするしかないのでマモン様の前でウソを言えないからそう答えると、マモン様が俺の額に右の指先を軽くトッ…と置いたその瞬間、怪我をする前の記憶を強制的に呼び覚ましてくれたお陰で俺に何があったのかをすぐに思い出すことが出来たではないか。
て、てかこんな技まで使えるなんてそっちのがビックリだわ…
「どうだ?思い出したか?」
妖しい表情で尋ねてくるマモン様に対し、素直に「はい…」と答えるしかない。
でも…そうか、俺あの時…
「罪人の一人の挙動が怪しかったのですが、ソイツが急に私と二十四番に襲いかかってきたのかと思えばいきなりソイツの中から何かデカい刃物のような物に斬りつけられたところの記憶までは思い出せました…。そのあとの記憶は曖昧なので思い出せませんが…」
「罪人の中から何が飛び出してきた?」
「それは私にもよく分かりません。一瞬の出来事すぎて、しかも構えた棍棒すらも真っ二つに折られてしまったものですから、奴が人間ではないということしか今は説明出来ません」
「十中八九人間でないのは確かだな。まだこの島にその者の気配が蔓延っておる。実に不快だ」
「も、申し訳ありませんマモン様…!侵入者を許してしまうだなんて私は…!」
「我々にも落ち度があるのは確かだ。我々が不在だった為に結界の効力も薄れていたのだろうからな」
「そんなことは…」
「行くぞ、坂崎」
「えっ…?」
「行くと言っておるのが聞こえんのか?」
「す、すみません!分かりました…!」
慌てて大理石の舞台からパッと降りて、マモン様が行くあとへとついて行くだけ。マモン様が歩いているからその前を走って行くことは許されないだろうし、ここは大人しくマモン様について行こう。
館から出て歩いて島をこうして二人で歩くだなんて滅多にないからすっげぇ変な感覚だ。
「感じるか、坂崎」
「えっ…!?」
急に話しを振られてビックリしてしまう。やっぱ悪魔こえーよ。
「何がです?」
「人間でも悪魔でもないものの気配。お前には感じるか?」
「……。す、少し」
「お前のその言葉が嘘なのか誠なのかは分からんが、その言葉を信じよう」
「あ、ありがとうございます」
うん。ウソではないけど本当にうっすらって感じだからな…。そりゃもっと近づけば感じるけどさ。でも今はまだ気配が遠すぎて俺にはフワッとしか分かんない。俺もまだまだ修行が足りんな…はァ。
暫く沈黙が続く中を歩いてると、マモン様がピタッと足を止めたので「なんだろう?」と呑気に思っていたら、マモン様が見つめるその先にあったのは見慣れた二人の姿がそこにはあった。ただ、二人はなぜか倒れ込んで動けない状態だったので俺が慌てて「お、おい!?」と言いながら駆け出しかけた時にマモン様が俺を呼び止める。
「な、なんでしょうかっ?」
「無駄だ。死んでいる」
「……えっ?」
マモン様の一言にドクンッと大きく鳴る心臓が痛かった。
なんて…言ったんだ、今?マモン様は今…
「死んだ…?」
「見れば分かるだろう。既に息をしてないではないか、ベルゼブブとアスモデウスの使者は」
「……なんで」
「その何者かの仕業で間違いないだろう。足を止めるな。行くぞ、坂崎」
「しかしっ…!!」
「今ソイツらに構っている場合か?」
「ですが…っ!」
「私に口答えか?随分と偉くなったものだな、坂崎。私を怒らせたくなければ黙ってついて来い」
「…っ。は、はい」
マモン様にこんなこと言われてしまえば俺はこのお方に従うしか道はない。駆け寄ってその体を起こしたい。抱き上げてやりたい。こんな場所に放置しておくことなんてしたくない。
だけど全てはマモン様がそう命令するならば俺はそれに従うだけ。
目を背けたくなる思いで二人の横を通り過ぎる時、チラッと横目で二人のことを確認してみせるも……確かにマモン様の言う通り、もう死んでるんだな…ってのが一目で分かってしまった。
もし気を失っていただけなら二人の目は瞑っているはずだ。それなのに今二人の横を通り過ぎた時に見えたものとは、二人は目を開いたまま地面に倒れ込んでピクリとも動かないでいたのが何よりの証拠。
ドクン、ドクンと心臓の鼓動が痛すぎるくらいに俺を追い詰めていく。歩き出すその足が震えかけている。このまま二人を置き去りにしておくだなんてそんな…と思うと同時に、他の奴らは本当に大丈夫なのか…?という疑問を持ってしまった。
他のみんなや罪人たちは無事なのか?
「マモン様…他の奴らは今どうなっているのでしょうか…?」
一応しっかりと地に足をつきながらもなんとか歩く俺は、震える声で尋ねてみせるもマモン様は冷たく一言言い放つだけだった。
「少し黙れ坂崎」
「す、すみません…!」
「そうではない。前をよく見よ」
「…?」
マモン様の言う通りにする為に、今歩いて行く方向へと視線をよーく凝らしてみせると、確かに向こう側から真っ黒い何かがこちらへやって来ているのが見えてきた。な、なんだアレは?アレがマモン様の言っていたその人間でも悪魔でもない奴ってことなのか?
心が落ち着ける間もなく向こうからやって来る何者かからマモン様を護衛する為に、一応俺がパッとマモン様の前へと立ってみせるがまぁ俺なんかよりマモン様のが当然強いんだからあんま意味のない行動かもしれないが、やらないよりかはマシだろう。
そしてすぐにソイツは俺たちの目の前までやって来たはいいものの…この黒いモヤモヤした奴がさっき俺をぶった斬ってきた相手なのか?
それでもって俺の仲間たちを殺した奴?
「んー…?あれ、お前さっき斬ったはずなのに生きてる」
「テメェ!俺の仲間たちを殺したのか!?」
「そうかもしれない。呼び出されたから仕方なく殺し回ってるだけ」
「何を言ってんだテメェ…」
全身が黒い霧のようなもので形成されており、その顔はよく見えない。足元は浮遊しており地面から少し離れているので、もうそれだけで人間ではないというのが一発で分かる奴だ。声も不快なノイズのような聞き取りにくい声をしてるし。
しかしコイツが悪魔でもないって…じゃあなんなんだろうか?見た目はほぼ悪魔にしか見えんのだけどな。
「ソイツが悪魔か…。マズいなぁ…、やっぱ帰ろうかなぁ」
「逃げるのか、お前!?」
「待て坂崎」
「えっ?」
俺が聖の剣に手をかけ奴に向かって飛び掛ろうとしたその時、なぜかマモン様が俺を止めに入る。
「奴は死神だ。無闇に近づくとその命、今度こそ全て狩り取られることとなるぞ」
「なっ…!死神…!?」
俺が驚きの声をあげた次の瞬間、マモン様がアイツに対してバッと手を向けてみせた途端、奴が被っていたフードだった部分が巻き起こされた強い風によって霧状にサラサラと消えてしまったかと思うと、奴の顔がお披露目されたその瞬間俺もコイツが「死神だ」と瞬時に分かってしまう出で立ちをしていた。
剥ぎ取られた部分が見えてきた瞬間、奴の頭部が髑髏だったのを目にしてしまえば言葉が出てこなくなってしまった。本当に絵画とか創作の世界とかでよく見るような、まさに〝死神〟とでも言えるその姿。
悪魔じゃないのは確かだな…。死神とはいえ奴も一応は神だ。マモン様たちが不快なのは至極当然か。
「なぜこのような悪魔が統べる島で貴様のような冥府の神が居座る?」
そうマモン様が冷たく言い放つが、死神は「呼ばれたから来ただけだ」と淡々と答えるだけだ。
「我々の島だ。今すぐ出ていけ」
「……そうかぁ、お前かぁ」
何かをブツブツと独り言を言ってる死神は、マモン様の言葉はほぼスルーしているようにしか見えない。というより、俺の方をジッと見てきているのか?その真っ黒な本来なら目のあった部分に見つめられると、背筋がゾッとしてしまうのは仕方がないよな?だってこんな死神なんて…初めて出会うんだから。
「だからあの男たちは死なずという訳か…」
「…?」
「どうりで狩り取れん訳だ。他人の器に他人の魂が入っているだなんて想像すらしていなかった。興味が湧く」
「……、」
他人の器に他人の魂…。もしかして俺と二十四番、七十二番のことか?なんでコイツがそんなことを知っている?
「二度は言わん、出ていけ。ここは貴様のような下賤な神が来るような場所ではない」
「その男の命をくれたら帰る」
そう死神が口にした途端、ビリッと地面から伝わる気迫が俺の足の裏から伝わってきたのは気のせいではないと思う。
奴はマモン様の怒りに触れた…?
「私の可愛い哀れな使者を奪い去ろうというのか、死神よ」
「…マモン…様?」
ォォオ…とマモン様の足元辺りから僅かながらに風が生まれ始め、その風は次第に異様な気を解き放ちかけているせいで俺の体はまたゾクッと寒気が走る羽目になってしまった。
「貴様は今、七つの大罪である我らの怒りに触れた。我らが裁くはずであった罪人たち、そして他の船頭たちをよくも貴様は……」
「マモン様…、何を仰って…?」
マモン様が意味深な言葉を口にしたのち、パッと右腕を天へと掲げた瞬間…また俺に悪寒が襲ってきてしまうのには理由がある。
来る……、悪魔たちが…全員来るっ…
「ッ…!!」
俺が反応する前に到達してしまった六体の悪魔たち。
マモン様が手を掲げ、他の悪魔たちが物凄い音と共にドオオォォン!!と電撃にも似た力が地面に衝突したので俺は慌てて悪魔たちから距離を取るものの、やはりマモン様たちは仮の人の姿から元のとてつもなく醜い姿へと変わり果てているではないか。
空は当然真っ暗になっており、辺りを見渡してもどこもかしこも悪魔たちの膨大な魔力で満ちており俺はまた心臓がバクバクするような思いでマモン様たちを恐る恐る見上げるしか出来なかった。余りにも恐ろしすぎて直視なんてとてもじゃないが出来るはずがない…
「あぁー…マズい。怒らせてしまった」
「貴様は我らの島を荒らし、好き放題しおった。断じて許せるものではないわ」
「下等な神めが。我らに勝てるとでも思ってるのかッ?」
「神なんぞが我々の聖域に踏み入っていいはずがなかろうが!」
口々に死神に対して迫力しかない圧で責め立てていく悪魔たちの怒りにどうやら簡単に諦めがついたのか、死神が悪魔たちを見上げながら「それはすみませんでした。私も仕事をしていただけですので…」と言いかけていた時に、誰がやったのかは分からないが死神目掛けて業火の柱を死神にお見舞いしてしまったせいで、死神は本当に一瞬のうちに灰へと化してしまっていた。
ゴオオォッという轟音の焔と共にあっという間に片付けられてしまった死神。余りにも悪魔たちの前では呆気なさすぎて、今の光景を俺はしっかりと目にしていたはずなのに脳の処理が追いついていないようだ。何が起きたか最初分からなかったんだもの。
「…?…えっ??な、なんだったんだ今のは…?」
疑問が口に出てしまった数秒後、元の姿に戻っていた悪魔たちがようやく人の姿へと変化してくれたお陰で、さっきよりかは悪魔の強すぎる邪気や妖気が収まってきたから心臓のバクバクはなんとか落ち着いてはきた。空を見上げてもやはり曇り天気ではあるのだが、先程の真っ暗な今にも嵐が起こりそうな空ではなくなっていたので少し安堵する。
しかしさっきまで死神が立っていた場所には、なんの跡形も残っていない。奴は本当に死んだというのか…?死神なのに?よく分からんが、この悪魔たちの力なら神を殺せるのもまぁ頷けるから不思議にも思わんけども。
辺り一帯が落ち着いたのを確認してから俺はソロソロとマモン様の傍へと戻って来てみると、マモン様が「あヤツは死神の中でも所詮は下等な神。我々に敵うはずもない」と冷たく言い放ってしまう。
「で、ですが一応神なのでは…?いいのでしょうか、もし他の神の怒りに触れでもしたらマモン様たちが危ういのでは?」
「…奴は余り相手とのコミュニケーションが取れていたようにも思えん」
「えっ?」
「差詰裁かれるはずだった罪人の中の一人が浅い知識を持っていたせいで出来損ないの死神が一人召喚されただけだろう。神々もあんな奴を庇うほど暇ではないわ」
「そうですか…」
でも…、そんな奴に俺の仲間たちは命を奪われたんですよ…?
俺としては十分に脅威すぎるのだが、やはり悪魔たちにとってはそうでもないというのか。でもやっぱり納得いく訳がない。例えアイツが出来損ないの死神だとしても、命を確実に狩り取ることの出来る奴だと知ってしまえばどうしても怒りが沸き起こってきてしまう。
「行くぞ坂崎」
「…えっ?あ、はい…」
またマモン様が命令してくるので俺はそれに従うだけ。
他の悪魔たちも俺たちと一緒に同じ場所へと向かうのだが、ベルゼブブ様とアスモデウス様だけは俺たちとは別の方向へと勝手にどこかへと行ってしまった。
「……。」
俺はどうすれば良かったのか。ベルゼブブ様とアスモデウス様に謝ることすらも出来ないのか…
お二人が行ってしまった先を見つめたあと、もう一度マモン様に「坂崎」と呼ばれてしまえば俺は短く返事をして彼らについて行くだけしか許されていないのだから。こんな俺が反抗していい訳がない。
そして五分ほど歩き、海が見える開けた場所の方までやって来た瞬間に気づく違和感の空気。最初はこの違和感がなんなのかは分からなかったけれど、周りを見渡した瞬間にまたもや俺は言葉を失うことになる。
「なっ…」
罪人たちが…全員死んでいる…!?
頭ではさっきの死神のせいだってのは理解しているけれど、この地獄のような光景のせいで頭がそれを拒否しているかのように思える。そんなはずはない、こんなこと有り得ない!と。
「なんなんだこれは…」
俺が呟いたあとにマモン様が「もう分かっておるだろう」と相変わらず冷たく返してくるだけ。しかしマモン様たちは罪人たちのことなんて目もくれることなく、どんどんとこの死体の山の中の先へと突き進んでいくので俺も意を決して歩き出すしかない。
マモン様だけはゆっくりとマイペースに歩いているのに対し、他の悪魔たちはマモン様よりも少し歩くペースをあげてはどこかへと一直線に向かっているのに気づく。なので俺もそのあとについて行くのは当然だったのだが…
俺はこの数秒後、受け止めたくない現実に遭遇することとなる。
「…?」
やがて見えてくる見慣れた俺の仲間たち。
しかしその仲間はさっきの二人同様、全員がその場で倒れて動かないでいるその姿を目にしてしまった途端、俺の中での嫌な記憶が急激に頭の中に全て雪崩込んできては俺の体を氷漬けのようにさせてくるこの景色。
俺のトラウマの一つでもあり、最早償えないところまできてしまっている証。
「ウソだろ…?ウソだろおい…!!」
慌てて駆け寄って行くものの、悪魔たちがそれぞれの使者の前へと佇んでジッと眺めているのを俺はその近くでただ見やるだけしかなく…。悪魔たちがそこにいるせいで俺はみんなの方へと迂闊に近づけないでいた。多分今近づくと悪魔たちの怒りに触れるかもしれないから。
「なんで……」
なんでだよッ!?!
俺が気を失ってる最中に何があったってんだよ!?おかしいだろこんなの!!
なんでまた……なんでみんながまた死ななくちゃならないんだよ…ッ。
「二十四番と…七十二番はどこだ…」
アイツらの姿が見当たらない。
アイツら二人ならまだ生きていないのか?仲間たちとは分かれて別の場所にいるという可能性とかはないのか?
フラッとアイツらを捜しに行く中、死んでしまった仲間たちの間を力なく通り過ぎていく俺を後ろからただ見つめていただけのマモン様。今度はマモン様が俺の行く先のあとをついて来る形になり、みんなの顔が見れない俺は絶望し切った顔だけをしながら足を一歩一歩踏み出していく。
「どこだ…。二人はどこだ…」
ザク、サクっと地面の草を踏む足音がこんなにも低く重たく感じるなんていつぶりだろうか。
もう体が鉛のように重たい。歩く度に体がフラついていて、これ以上先に進むことを渋っている自分がいるのも分かってはいるけど、こんなの…こんな仕打ちはあんまりだろ…
どうして俺はいつも仲間たちを死に追いやってしまうのだろうか?
「……ぁっ」
いた。二十四番と七十二番だ。
でもやっぱりアイツらも他のみんなと同様に二人して地面に倒れ込んでいるだけの光景を目にしてしまえば、もう俺にはどうすることも出来なくてただただ二人の傍まで行ってやることしか出来なかった。
「…おい、」
俺が呼びかけても二人は当然返事をしてくれない。
もう…どうなってもいいとさえ心を過ぎってしまったこの心は、どれほど脆弱で愚かなのだろうと静かに自分自身にただひたすらに怒りを覚えるだけだった。
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