秘密警察-Secret Police- - 5/39

SP4

バカ三人のスクワット対決も終わり、ひとまず吉田と鈴木には今から少しだけ実力を見せて貰う為にこの場所から移動して、俺たちがいつも使っているトレーニング場まで連れて来た。

ボスが引き抜いてきたってことは、俺たちと同様に物凄い身体能力の持ち主だということは分かっている。ただ、俺たちもこの精鋭部隊に入る前は今ほど身軽に動けてた訳じゃない。一ヶ月間、みっちり修行した結果こうなったのだから。

そうだな、何から始めようか。

うーんと迷っていると、桜井が吉田に向かって「懸垂出来る?」なんてテキトーに尋ねていた。‥そうか、俺がコイツら二人に新人を任せたのだから、俺は黙って見ていることにしよう。

「懸垂出来ますよ」

「‥んとねー、俺の場合は高見沢みたいに飛び道具とかそういうの教えるのが上手くないから、まず先に体をとにかく動かしてくれないと困るんだよねぇ。じゃあちょっとここから一番端まで走って俺と勝負してくれる?」

「は、はい!」

チラッと桜井が俺に合図してくるので、俺は「よーい、スタート」とやる気なさそうに言った途端、二人は物凄いスピードであっという間に向こう側まで着いてしまっていた。普通に走ってる訳じゃなくて、身軽そうに跳んでいるといった方が早いか。

しかし桜井の方がやはり到着したのも早く、それに吉田はこれだけの勝負で結構息を切らしてしまっている。桜井に着いて行くのが精一杯だったようだ。

‥まぁ、いきなり先輩にピッタリくっ付いててゴールするなんて、出来る方だと俺は思うがな。隣に居る棚瀬に「アイツどう?」と尋ねてみれば、彼も「上達はすぐしそうですけどね」と見込みはある模様。

「ハァ、ハァっ‥!は、速い‥っすね、桜井さん‥!」

「そりゃどーも。でもお前も速いじゃん、体力もあるみたいだしさ。多分明日からすっげー厳しい練習が待ってるから、今日はあと少し太郎の体力がどんなもんか見るだけにするわ」

「すっげー厳しい練習って‥」

「これ乗り越えなきゃ精鋭部隊から外されると思った方がいい」

「わ、分かりました‥」

おーおー、ビビってるねぇ。

一方鈴木の方は、高見沢からとある物を見せて貰っている。

「コレはなんですか?」

「コレはね、早く移動したい時に使うワイヤーだよ。ここを押すとワイヤーがプシュッと飛び出て、もっかい押すと元に戻るの。ちょっと見ててね」

アレだ、見た目は掌サイズのメジャーってとこだ。そこの真ん中にあるボタンを押せば、今実演している最中の高見沢みたいに勢いよくワイヤーが飛び出してくる。そのワイヤーを建物や木の枝やらに引っ掛けたり刺したりしつつ、あとは自分のコントロール力とワイヤーを戻すタイミングなどを見計らえば、遠くに居る敵を一瞬で追い詰められる代物。

高見沢が伸ばしたワイヤーを高さが七メートルくらいある鉄棒に引っ掛ければ、もう一度ボタンを押すとかなりの速さでそちらへ向かうことが可能となる。このワイヤーに慣れている高見沢なので、失敗することもほとんどない。

一気に七メートルもある鉄棒の上までトタッと軽い足取りで立ってみせる高見沢。それを見ていた鈴木も目を輝かせては「おぉ‥!」と感動している様子。

そこからピョンと降りてくる高見沢は見事綺麗に地面へと着地し終えると、鈴木に「なんとなく分かったー?」と聞いているが‥

「言っとくがこの技術獲得するの難しいからな?」

「え、あ、はい‥!」

隣に立っていた鈴木にそう説明すると、若干まだ俺に対しての恐怖心があるのか怯えられてしまっているな。まぁいいけど。

少し離れたところに居た高見沢だったが、一気に飛び跳ねてはこっちに戻ってきた高見沢が鈴木の前までやってくると、ワイヤーを見せながら再び真剣な顔して説明に入った。

「コレね、敵に向かってワイヤーをシュッとやれば、それだけで結構大きいケガも与えることが出来るし、マスターしといて損はないと思うよ」

「へぇ‥!ぼ、僕もコレを使いこなせるようになりたいです!」

「じゃあ明日からみっちりと練習ね。今日中に技術班に頼んでもう一個コレ貰ってくるから」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、コレ使っていいから一回やってみ?」

「はいっ!」

ふぅん、中々悪くない。これなら二組ともいいコンビにはなりそうだな。

桜井も高見沢も面倒くさがるかと思いきや、きっちり後輩に自分の持っている術を教え込もうとしている辺りは偉いと思う。

「なんか懐かしいっすね。俺と坂さんが組んだ直後もこんな感じでしたよ」

「あぁ、そうだったな。お前の場合は身体能力がズバ抜けてて度肝抜かれたが」

「へへー!」

なんとも軽い返事の仕方だこと。

二組ともそれぞれの先輩の得意とした分野をまず先に説明や手本を見せて貰いつつ、吉田と鈴木もほんの少しだけ実践していたりと案外積極的だな。

しかし今日は二人の実力を見たかっただけなので、ここら辺にしておくか。‥この後牛角行くんだろーし。

「おい、もういい。戻るぞ」

「早くみんなで焼肉行きましょうよ~!」

俺と棚瀬のかけ声で、四人は「はーい」と返事をくれる。俺と棚瀬で先にここから出ると、ようやくバタバタうるさい足音を立てて走ってくる奴らが後ろに立って歩き出す。

「てかボスは?報告しなくていいの?」

「いねーから別にいいんだよ。居ないアイツが悪い」

「それもそうだな。よし、早く焼肉行こう!奢りで食う焼肉なんて最高!」

「お願いだから、あんま高いの頼むなよ!?」

「高見沢さん、僕たちまだまだ若いんで、飯ならいくらでもイケます!」

「そうですよ!俺もなんだかお腹すいてきました!」

「遠慮しろよなお前らは‥」

ちっとはここのチームの雰囲気も分かってきてるようだな、二人とも。

ま、あんまりチョーシのればそりゃ桜井も高見沢も強いんだから仕返しされたって実力でどうにかするしかないもんな。それをこれから全て二人は学んでいくんだろうから、あまり口出しせずに見守ってやろうか。

「じゃあまず先に俺から言いますね!俺カルビ三種盛りがいいっす!」

「なっ‥」

「んじゃ俺はこの黒毛和牛カルビと~、霜降り上タン塩」

「‥!?」

「俺はシャトーブリアンがいいですっ!」

「ひえっ‥」

「僕は‥この、わたあめのやつ‥がいいです!」

「わたあめっ?」

「ほらコレです!わたあめすき焼きカルビっていうの‥」

鈴木がメニュー表を指差してはなんだかワクワクしている。値段も他の奴らと比べると良心的だし、わたあめとか可愛らしいこと言っているそんな鈴木に感動したのか、高見沢が涙目で「お前‥ホントいい奴だなぁ!」と感激している。

「食え食え!お前は俺の可愛い後輩なんだから好きなだけ食えっ!」

「わっ!ちょ、ちょっと‥高見沢さんっ!やめて下さい、周りに人がいるんですから‥!」

まだ飲んでもいないのに、高見沢は鈴木の肩をグイと引き寄せては頭をくしゃくしゃと撫で回してはずっと感激しっ放し状態。初めて出来た可愛くて優しい先輩思いな後輩がそれだけ可愛いのだろう。俺は一度たりとも高見沢も桜井も可愛いなんて思ったことないが。

ずっと鈴木に引っ付いていた高見沢だが、ハッと思い出したかのように「坂崎はっ?」と俺が何を頼むのかを尋ねてくるので、石焼ビビンバでいいと答えると、「お前も肉食えよ」なんて言ってくる。

「こ、今回は俺が奢るからさ‥お前も好きなもん食っていいのに」

「‥じゃあ、みんなから少しずつ貰うわ」

「それでいいの?じゃあもう頼むよ?すいませーん!」

店員さんを呼んではメニュー表を見て注文を始める高見沢。本気で頑張ってコイツらに奢るつもりでいるらしい。多分、後輩がいるから下手に格好悪いところ見せたくないという見栄があるのだろうけど。

あ、言っとくが全員私服にちゃんと着替えてるからな。基本的に俺たちは市民に紛れ込んで捜査などを行う為、所謂私服警官とかいうやつだ。まぁスーツも着てる時が多いけどな。

そう考えてる内に、ビールが運び込まれてきた。お、やっと飲めるぞ。

「よし、カンパイするぞ‥って!坂崎勝手にもう飲むなよぉ!」

「てめーらで勝手にやっとけ」

「んも~‥。じゃあカンパーイ!」

「カンパーーイ!!」

さて、こっからどれくらいコイツらは食うのだろうか‥。多分、高見沢が泣く思いするなこりゃ。

腹を満腹にさせていた五人をよそに、トイレに立ったと見せかけて先に会計を済ませておけば、後で合計金額を見た高見沢が俺に泣きついては「坂崎ありがとおぉおお!!助かったぁああ!!」と言ってきたのは二時間後のことだった。

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!